VOCALOIDを制作する会社が、VOCALOIDを使って制作した著作物を権利者削除できる法的根拠について調べてみた。
昨日、初音ミクのキャラクターイメージってなんぞ? - あんにんにっき。 という話を書いた。
「音声合成ソフトウェアを作っている会社」が、それを使って作成されている著作物を権利者削除できるのは、何故なのだろう?という疑問なのだけれども、はてブコメントで使用許諾契約書に書いてある事を提示していただいた。
公序良俗に反する歌詞を含む楽曲について – 初音ミク公式ブログ にもあるのだけども、
VOCALOIDを用いて楽曲を制作する場合、「VOCALOIDライブラリ使用許諾契約書」に記載されております通り、公序良俗に反する歌詞を含む合成音声を公開または配布することを禁じております
という事のようである。
著作権についても契約についてもそこまで詳しいわけではないが、なんだか腑に落ちない。腑に落ちないので調べてみる。
著作権は著作者人格権と著作権(財産権)の二つに分かれている。
(参考にしたところ はじめての著作権講座)
それによると、著作を公表するかどうか、を決定する権利である、公表権は著作者人格権に属するらしい。
記憶によれば、著作者人格権は放棄できないはず。wikipediaによると、
著作者人格権は、一身専属性を有する権利であるため他人に譲渡できないと解されており、日本の著作権法にもその旨の規定がある(著作権法59条)。
という事らしい。
と言うことは、「VOCALOIDライブラリ使用許諾契約書」に書かれている公開または配布を禁ずるという行為は、著作権法に違反しているようにも見える。
ところで、はじめての著作権講座 によると、著作者、とは
共同著作物については、共同で創作に寄与した者全員がひとつの著作物の著作者となる
との事である。
ということは、こういう事か?
- 著作物を公表するかしないかを決める権利(著作者人格権の中の公表権)を有しているのは著作者である
- 「VOCALOIDライブラリ使用許諾契約書」は公開または配布を禁ずる。すなわち、「VOCALOIDを制作する会社」は公表しない事を決める権利(著作者人格権の中の公表権)を持つ。
- 著作者人格権は譲渡できない。だがしかし、「VOCALOIDを制作する会社」は著作者人格権を持つ。
- と言うことは、「VOCALOIDを制作する会社」は「VOCALOIDを使って制作した著作物」の「共同著作者」である。
なるほど。共同著作者であるとするならば、著作物を「権利者削除」するという事にも納得がいく。
私の中ではなんとなく結論が出た気がする。
なので、「VOCALOIDライブラリ使用許諾契約書」に契約するということは、「VOCALOIDを制作する会社」に対して「共同著作者」で有ることを認める、という事に他ならないように思われる。
確かに、音声合成ソフト制作において技術的な部分・表現的な部分もあると思うので、それを使った著作物に対して「著作権」が発生するのだ、と言われれば個人的には納得できなくもない。
だけども、ソフト使ったときに、そのソフトを作ったところと共同著作者になるのだとすると、それを認めるのは躊躇してしまう。感情的に。
できれば、「このワープロソフトを使って書いた文章が公序良俗に反する場合、公開を禁ずる」と言われたり、「このグラフィックツールを使って描いた絵が公序良俗に反する場合、公開を禁ずる」と言われたりするような世界にはなって欲しくないものだな、と思う。
404 Blog Not Found:VOCALOIDはただの道具です で、
オープンヴォーカロイドが必要になってくるのだろうか....
という事が書かれていたが、納得できる一言だと思う。
道具に見える物は、道具であって欲しい。私はそう思う。